SMCラボラトリーズが毎⽉発信している研究コラムをご覧いただけます。
2025.02.02
弊社では多様化するニーズにお応えするため、蓄積したノウハウを基にカスタムモデルサービス*をご提供しております。 *:カスタムモデルとは、現在弊社がご提供していないモデルに関して、クライアント様からいただいた文献やプロトコルを基にモデル確立、薬効評価を行うサービスとなります。 本記事では、カスタムモデルの一例として、弊社クライアント様がScientific Reports誌に投稿された文献をご紹介いたします (Preethy et al., Scientific Reports. 2023)。 Title: Resolution of fibrosis in mdx dystrophic mouse after oral consumption of N-163 strain of Aureobasidium pullulans produced β-glucan こちらの論文では、mdxマウスを用いた薬効評価の結果が示されております。 mdxマウスは、ヒトのデュシェンヌ型筋ジストロフィーの発症機序に類似した病態を示すため、エクソン・スキッピング創薬研究において広く活用されているモデルマウスです。 本論文では、mdxマウスに黒酵母菌Aureobasidium pullulansのN-163株由来β‐グルカン(BRMG)を投与しており、筋肉の炎症と線維化が予防されたことが報告されております。 弊社では、現在のモデルラインナップにない病態モデルをご希望の場合も、本件のようにモデルの確立や予備試験から実施することが可能ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
2025.02.02
本記事では、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の疾患モデルとして知られているブタ膵臓エラスターゼ(PPE)誘発肺気腫モデルをご紹介いたします。 本モデルは、肺におけるエラスチンの分解およびその分解物により誘導される炎症細胞浸潤により病態が発症します。 弊社では、Microsprayerを用いてPPEを気管内へ噴霧状に投与し、肺へ均等に暴露させるため、再現性のある均一な病態を発症させることが可能となっております。 下図に示すように、PPE投与により肺胞壁が破壊され、平均肺胞径(Mean linear intercept)が増加します。
2025.02.02
本記事では、疾患や病態の理解に伴う新しい概念である「代謝異常関連脂肪性肝疾患」についてご紹介致します。 この疾患概念については、2020年のJournal of Hepatology誌にて合意声明が掲載されています。 A new definition for metabolic dysfunction-associated fatty liver disease: An international expert consensus statement (Eslam et al., j Hepatol., 2020) 非アルコール性脂肪性肝疾患から代謝異常関連脂肪性肝疾患へ 以前もご紹介させて頂いたように生活習慣変化に伴い、糖尿病や肥満を示す人口が多くなり、既存の患者数と共に潜在患者の多さから非アルコール性脂肪性肝疾患が注目をされています。 非アルコール性脂肪性肝疾患という疾患の理解が進むにつれ、当時の診断基準の定義だけでは患者の実態に合わない例が認められるようになってきました。その現状に対し代謝異常関連脂肪性肝疾患という概念が示され、今後も非アルコール性脂肪性肝疾患自体は存在し続けるものの、疾患を一括りにするのではなく、原因や病態を細分化して薬の開発を行っていく必要性が加速していくと考えられます。 弊社では既に代謝異常関連脂肪性肝疾患を想定したモデル開発を開始しており、アップデートがありましたらご連絡させて頂きます。 弊社はこれまで炎症と線維化の分野に特化した病態モデル動物を用いた非臨床試験をご提供して参りました。 弊社のSTAMTMマウスは弊社SMCラボラトリーズが開発した世界初の非アルコール性脂肪性肝炎から肝ガンを発症する病態モデルマウスであり、後期2型糖尿病の背景を有し、ヒトNASHと類似した病態を発症します。
2025.02.02
本記事では、世界人口の9~12%が罹患していると推定されている慢性腎臓病と病変の特徴についてご紹介致します。 昨年、Nature Reviews nephrologyに下記タイトルの論文が発表されました。 The COVID-19 pandemic: progress in nephrology COVID-19の合併症として腎機能の低下が認められることからも、腎疾患への注目が集まっています。 –慢性腎臓病とは 慢性腎臓病は腎機能の低下や構造の異常が継続する疾患であり、腎障害マーカーや組織学的な解析により評価が行われます。 この慢性腎臓病は病態進行に伴い様々な合併症を引き起こし、米国では毎年数百万人が慢性腎臓病関連の合併症により生命が脅かされており、人口の1%未満である上記患者によって年間医療費の6%以上が消費されるとの報告もあります。 –慢性腎疾患の病態について 腎疾患は病変の主座により、大きく糸球体疾患と尿細管・間質性疾患に分けられます。 腎機能の低下や腎臓の構造異常は共通しているものの、原因や病変の主座、認められるマーカーなどに違いがあります。 そのため、弊社に薬効評価試験の依頼があった場合も、お客様のターゲットによって病変の主座や認められる腎障害マーカーについてはお問い合わせが多い点になります。 現在までにCKDの根本的な治療法はなく、その進行遅延による病態悪化抑制を目的とした治療が行われています。そのため、慢性腎臓病に対する根本的な治療薬の開発が望まれています。 弊社では慢性腎臓病に対する病態モデルマウスを用いて新薬開発に対する薬効評価試験サービスを提供しております。 下記の4種類のモデルをご提供しており、各モデルにおいて得意とする評価項目が異なるため、お客様のターゲットに合わせてご利用頂くことが可能です。
2025.02.02
本記事では、STAMモデルのデータについて、ご紹介したくご連絡致しました。 ABS-0579| Molecular Pathogenesis of Non-Alcoholic Steatohepatitis (NASH) through the Dysregulation of Metabolic Organ Network in the NASH-HCC Model Mouse Treated with Streptozotocin-High Fat Diet 本発表で、STAM™モデルにおいて腸粘膜透過性の向上 (Leaky Gut)が確認され、そのNASH病態の発症・進行に腸内環境の変化が関与している可能性が示唆されました。 STAM™モデルは、弊社SMCラボラトリーズが開発した世界初のNASHから肝ガンを発症する病態モデルマウスです。 ヒトNASHと類似した病態(脂肪肝→NASH→肝線維化→HCC)を発症することから、これまで多くの薬効評価試験や基礎研究に活用されてきました。 NASH患者では、腸管内のマイクロバイオームの変化やLeaky Gutなどが、病態に影響を及ぼすことが報告されております(Lixin et al., Hepatology, 2012; Jay et al., CMGH, 2015)。 腸と肝臓は門脈で繋がっており、肝臓の血液供給の約70%が門脈を介しています。そのため、腸に由来する一連の細菌、細菌の代謝物やエンドトキシンが、門脈を通じて肝臓に影響を与えます。 弊社では、STAM™モデルにおける肝臓と腸の相互作用を検討するために、各種解析を行いました。 腸管上皮のタイトジャンクション関連タンパク質であるZO-1を解析した結果、病態進行に伴い発現量の減少が確認されました(図1)。また、血液中のエンドトキシンの発現量の増加も確認されました(Fig.2)。 腸管におけるZO-1タンパクの発現低下や血中エンドトキシンの増加が確認されたことから、STAM™モデルはLeaky Gutを発症しており、腸管においてもヒトNASH患者の病態に相関していることが示唆されました。 プロバイオティクスによる腸内環境の改善に伴い、NASH病態の改善が示されているため、腸疾患改善に繋がる化合物をお持ちの場合は弊社STAM™でNASHへの効果を評価してみるのはいかがでしょうか。
2025.02.02
本記事では、弊社STAMTMマウスを用いた共投与試験についてご提案させて頂きます。 現在、様々な製薬企業様でNASHの非臨床、臨床試験における共投与試験が実施されております。 NASHは脂肪肝、炎症、線維化等様々な病態を発症する為、異なるターゲットに対する候補薬を共投与する事により、相乗効果を示すことが期待されます。 弊社は独自のNASH-HCCモデルであるSTAMTMマウスをご提供しております。STAMTMマウスはヒトNASHと類似した病態(脂肪肝→NASH→肝線維化→HCC)を示すNASH-HCCモデルとして、多くの企業様や大学様にてご利用頂いております。 STAMTMマウスは複数の共投与試験で使用された実績があり、SGLT2 inhibitorとDPP-4 inhibitorを用いた試験が一例として挙げられます[Jojima T et al., Diabetol Metab Syndr., 2016]。 以下がその際に実施された試験デザインとなります。 本試験では共投与群において、単剤投与群と比較して複数のパラメーター、特に線維化の改善が認められております。 共投与試験の実施により、NASH治療に対する候補薬の可能性を拡大させる事が可能であると考えております。 NASHをターゲットとした候補薬をお持ちの場合、ぜひ弊社のSTAMTMマウスを用いた薬効評価試験をご検討いただけますと幸いです。 弊社では今回ご紹介したSTAMTMモデルを始め、炎症/線維化に関連した様々な病態モデルを取り揃えております。詳細情報は弊社HPにてご参照頂けます。
2025.02.02
本記事では、弊社で既にご提供している全身性強皮症のモデルを改良した、 より臨床相関性の高い皮膚と肺で同時に線維化を発症するモデルのSSc-ILDのモデルを紹介いたします。 全身性強皮症は、皮膚だけではなく心臓、肺、腎臓などの全身の組織に線維化が起こる進行性の希少疾患です。 特に肺疾患は合併症の中でも発症率が高く、全身性強皮症患者の主要な死因として間質性肺炎が報告されております。 全身性強皮症の動物モデルでは、ブレオマイシン皮下投与による皮膚線維化誘導モデルが一般的であり、弊社でも以前からご提供しておりました。 より臨床相関性の高いモデルをご提供するために弊社では、昨年モデル作製条件の再検討を行い、皮膚および肺の線維化を同時に引き起こすモデルとしてリニューアル致しました。 本モデルは、強皮症において代表的な病態である皮膚の真皮長肥厚や肺の線維化が確認されております。 現在、全身性強皮症に対する根治療法はなく、皮膚や肺の各症状への対症療法のみです。 改良した本モデルを用いて、全身性強皮症の皮膚と肺の症状を同時に対象とする薬効評価試験を実施するのはいかがでしょうか。 こちらのモデルに関する資料の送付依頼やご質問に関しましては、お問い合わせください。
2025.02.02
本記事では、COVID-19患者が類似した症状を示す急性呼吸窮迫症候群(ARDS)のモデルである、Liposaccharide誘導性急性肺障害(LPS)モデルをご紹介いたします。 COVID-19患者では急性肺炎や肺線維化などの病態が発生することが報告されております。 急性肺炎は肺障害の初期症状として現れ、進行するとARDSを発症することが知られています。 ARDSは活性化した好中球により肺組織に損傷を生じ、細胞浸潤や浮腫を引き起こすことが確認されております。 LPSモデルはARDSモデルとして広く使用されているモデルです。 弊社のLPSモデルでは好中球有意な炎症細胞の増加やIL-6の上昇といった急性肺炎由来のARDSとの共通点があることから、抗ARDS薬への薬効評価に対し有効なモデルであると考えております。 また、弊社ではBleomycin誘導性肺線維化(BLM-IPF)モデルを有しており、肺障害の中-後期に発生する肺線維化の予防・治療効果の検討に多くのクライアント様にご利用いただいております。 そのため、弊社の肺疾患モデルではLPSモデルで初期、BLM-IPFモデルで中期-後期の肺障害やCOVID-19の症状に対する薬効評価試験が実施可能と考えられます。
2025.02.02
本記事では、癌モデルにおいて腫瘍の微小環境を含めて評価が可能な肝臓同所移植モデルをご紹介します。 医療の進歩に伴う寿命の延長により癌患者の死亡者数は増加の一途を辿っています。 そのため、治療薬開発の需要は高く、多くの臨床試験が実施されていますが、前臨床試験での成功に反して、臨床試験での成功には大きな壁見られます。 原因の一つとして、ゼノグラフトモデル使用の影響が考えられます。 ゼノグラフトモデルは癌研究を行う際、細胞株の利用により簡便に目的の癌腫に対する薬効評価を行うことが可能です。 しかしながら、ゼノグラフトモデルを用いた前臨床試験と臨床試験の結果における相関関係は低いことが報告されています(Johnson et al., Br. J. Cancer., 2001)。 そこで注目されるのが、同所移植モデルであり、このモデルでは腫瘍を取り巻く環境を含めた評価が可能となっています。 腫瘍微小環境の重要性については過去に報告がされており(Min et al., Curr. Opin. Genet. Dev., 2008)、腫瘍細胞と組織特異的間質細胞との相互作用は、腫瘍の成長、分化、および薬剤感受性に影響を及ぼすことも報告されています(Douglas et al., Nat Med. 2010)。 同所移植モデルでは比較的安価に腫瘍微小環境の影響を含めた試験が可能となり、ゼノグラフトモデルよりも有益な結果を得られることが期待されます。 お手持ちの化合物を評価する際に、まずは同所移植モデルを用いて効果の確認を行うのはいかがでしょうか。
2025.02.02
本記事では、弊社が開発した世界初のNASHから肝癌を発症する病態モデルマウス-STAMモデル–の評価実績について、その一例としてFarnesoid X receptor (FXR)アゴニストをご紹介致します。 FXRは、胆汁酸をリガンドとして作動する核内受容体であり、コレステロール代謝、糖代謝、インスリン感受性などの調節に関与しています。 そのため、FXRの活性化がNAFLD/NASHの治療に繋がると考えられ、治療薬の標的分子として注目され、これまでNovartis社のTropifexorを始めとする様々なFXRアゴニストの開発が行われてまいりました。 本モデルにおいても、Tropifexor (Novartis)、EDP-305 (Enanta)、Vonafexor (ENYO Pharma)などFXRアゴニストの薬効を評価した経験は複数件あり、その研究成果の一部は論文や学会発表として公表されています。 [Chau M et al. International Journal of Gastroenterology. 2019.; Hernandez E et al. Hepatol Commun. 2019.; Radreau P et al. AASLD. 2019.] NASHは複雑な病態を持ち、その発症機序も不明な点が多いことから、ヒトの病態を完全に再現するとされる動物モデルは、今日に至るまで報告されておりません。 そのため、遺伝子改変モデル、特殊飼料誘導モデル、薬剤誘導モデルなど多数の動物モデルの中から複数種を用いてNASHへの効果を総合的に評価していく必要があると言えます。 実際、今回ご紹介したTropifexorやEDP-305においても、本モデルに加えCDAHFDやAmylinモデルといった他NASHモデルを用いて薬効を評価しております。 本モデルは、病理組織学的にヒトNASHと類似した組織像を呈することから、臨床試験の主要評価項目であるNAFLD Activity scoreや線維化陽性面積の定量が可能な数少ない動物モデルです。 また本モデルを用いた薬効評価試験は800を超え、FXRのみならず多種多様な分子標的薬の薬効を評価してきた実績がございます。
あなたの研究を促進させます。