SMCラボラトリーズが毎⽉発信している研究コラムをご覧いただけます。
2025.01.30
本記事では弊社のSTAMTMモデルとDAMPs/PAMPs関連因子の相関についてご紹介を致します。 炎症や線維化を引き起こす因子の一つとして、組織や細胞の障害に伴って放出されるダメージ関連分子パターン(Damage-associated molecule patterns; DAMPs)と 外来細菌や腸管細菌が死滅や破壊されることで放出される病原体関連分子パターン (Pathogen-associated molecule patterns; PAMPs)が知られています。 DAMPs/PAMPsは細胞内のパターン認識受容体 (Pattern recognition receptor; PRR)によって認識され、免疫応答を誘導します。 またPRRは、肝臓中のクッパー細胞や肝星細胞にも存在しており、DAMPs/PAMPsのシグナルを受け炎症・線維化を誘発します。 【ヒトでのDAMPs/PAMPsとNASHについて】 ヒトにおいてDAMPs/PAMPsは、NASHの発症や病態進行に関連していることが報告されております。 今回は、DAMPs/PAMPs 関連因子の一例としてS100 protein A8[1]、Toll-like receptor 4 [2]、NLRP3 [3]を解析致しました。 [1] Serhal R, Biomed Res Int., 2015、[2] Vespasiani-Gentilucci U, Liver Int., 2015、[3] Traber P, PLoS One, 2013 以下のデータは、弊社STAMTMモデルを用いて上記遺伝子発現を解析した結果です。 STAMTMモデルにおいて、いずれの遺伝子も発現上昇の傾向が確認されたことから、DAMPs/PAMPsを標的にした治療薬の評価に本モデルを利用できることが示唆されました。 弊社では本モデルの経時的なRNAシークエンスデータを取得しており、今回解析した遺伝子以外にも、お問い合わせいただければ標的因子の調査が可能です。 その他、資料請求やご質問等ございましたらお気軽にご連絡ください。
2025.01.30
本記事ではSTAMTMモデルとHSP47などの線維化関連因子との相関についてご紹介を致します。 NASHは、単純性脂肪肝と異なり肝線維化を経て最終的に肝ガンに至る進行性の肝疾患です。 線維化ステージ後期である肝硬変や肝がんは、肝不全や死亡などのリスクが伴うことから、肝線維化改善はNASH治療戦略の重要な要素だと言えます。 【NASHにおける線維化について】 慢性的な炎症を通じて産生されたTGFβやMCP-1などのサイトカインを介して、肝星細胞はコラーゲンを産生する筋線維芽細胞様に形質転換することが知られています。 またコラーゲンは線維芽細胞内で未成熟な状態で合成された後、フォールディングを受け成熟型コラーゲンとして細胞外へ産生されます。 コラーゲンのフォールディングには様々な分子が関与していますが、中でもHSP47という分子はコラーゲン特異的に機能しています。 ヒトの肝線維化においては、HSP47の発現上昇が確認されており[1]、近年ではHSP47をターゲットとしたNASHを含む線維症治療薬候補として開発が行われております。 以下のデータは、弊社STAMTMモデルを用いた実施したRNAseqの結果より、HSP47を含む線維化関連因子を抜粋したものになります。 いずれの週齢においても各遺伝子発現量の上昇傾向が確認されており、本モデルが線維化関連因子を標的にした治療薬の薬効評価に活用できることが示唆されました。 [1]: KE Brown et al. Lab Invest. 2005 本モデルの経時的なRNAseqデータを活用して、事前に被験物質の標的因子の挙動を解析することが可能でございます。 またSTAMTM以外にも、弊社は食事誘導性のNASHモデルや急性肝疾患・肝硬変モデルなども有しております。 さらに、他の臓器における炎症・線維化モデルも多数ご用意しておりますので、詳細は是非お問い合わせください。
2025.01.30
STAMTMモデルのHCC関連データをご紹介します。 今日における肝細胞癌(HCC)の原因は、B型・C型肝炎ウイルス感染に由来する慢性肝疾患ですが、近年の治療法進歩によりウイルス感染に由来するHCC患者は、今後、減少すると考えられています。 一方で、生活習慣の変化に伴いNAFLDおよびNASH患者が増加し、それらに由来したHCC患者の増加が懸念されています[1]。 HCCの発癌メカニズムには、様々な分子生物学経路が関与しています。 今回は、主要経路の1つであるWnt/β-catenin経路について、弊社STAMTMモデルにおける遺伝子発現データをご紹介致します。 ヒトHCCでは、しばしばβ-catenin遺伝子の変異が生じており、その下流シグナル活性化が報告されています[2]。 弊社にて取得したRNAseqデータを用いて、STAMTMモデルにおけるβ-cateninおよびその下流シグナルの遺伝子発現を解析致しました。 また本モデルのHCCフェーズでは、半数の個体にβ-catenin遺伝子の変異が認められました。 そのため、Wnt/β-catenin経路においてヒトと同様の遺伝子発現パターンを示すことから、STAMTMモデルはHCCに対する薬効を検証する上で有用なモデルの一つだと言えます。 [1]:McGlynn et al. Hepatology. 2021 [2]:Z Wang et al. Mol Clin Oncol. 2015 HCC研究では、単一モデルだけではなく複数モデルを組み合わせた研究が不可欠であると考えられています。 現在、癌領域の研究をご検討されている場合、本モデルを癌領域の研究に活用するのはいかがでしょうか。
2025.01.29
MASHモデル(STAMTM)のMASHマーカーについて、ご紹介させて頂きます。 MASHの診断において、肝細胞の風船様腫大は単純性脂肪肝とMASHを区別するために重要な所見です。 風船様腫大を同定する上で有効とされている非侵襲性マーカーの1つにCK-18(サイトケラチン18)があります。CK-18はAASLDのFDAのワークショップでearly phaseのNASHマーカーとして推奨されており、これまでの臨床試験でも、病理との関連性が報告されています[Arun J. S, et al., Hepatology, 2015]。 弊社のSTAMTMでの血漿中のCK-18の解析結果には、以下のような特徴がございます。 STAMTMのCK-18 – 初期MASHを表す6週齢以降から上昇する – 病態の進行(単純性脂肪肝からNASH、線維症に至るまで)に伴い段階的に上昇する – ヒトのMASH H患者と同程度の上昇を示す[Ariel E. Feldstein et al., Hepatology, 2009] 弊社では、臨床相関性の高いMASHモデルをご提供させていただいております。 また、STAMTMマウスモデルに関する情報はこちらからご確認頂けます。 STAMTMマウスモデル
2025.01.29
本日はMASHの非侵襲性線維化マーカーについてご紹介致します。 現在、MASH診断において、最も信頼性の高い診断方法は、肝生検による病理組織学的検査となっています。しかし、肝生検はサンプリングエラーや患者への負担などの問題点があり、それに代わる非侵襲性の早期診断マーカーの開発が期待されています。 その中でも、今回は線維化の血中バイオマーカーである【プロコラーゲンIII-N末端ペプチド(PIIINP)】をご紹介致します。 PIIINPはⅢ型コラーゲン合成時に放出される末端ペプチドで、線維化の進行に伴い血中濃度が上昇することが予想されており、 臨床においては、単純性脂肪肝とNASHを区別できる有用なマーカーであることが示唆されています[Tanwar et al., Hepatology., 2013]。 弊社のMASHモデルマウスであるSTAMTMで血中のPIIINPを解析したところ、6週齢および9週齢時では、血漿PIIINP濃度の有意な上昇は見られませんでした。 一方、12週齢においては、有意差な上昇が確認されました。 STAMTMモデルでは、9週齢で線維化が確立しているにもかかわらず、線維化が進行している12週齢でのみ有意な上昇がみられたことから、より早期の段階で線維症の発症を検出できる方法を検討することが今後の課題と考えております。 弊社では今回ご紹介したPIIINPの他、様々なMASHの非侵襲性バイオマーカーの有効性の評価を行っておりますので、ご興味のあるマーカーがございましたら是非お問い合わせください。
2025.01.29
本日は、原発性硬化性胆管炎 (PSC)モデルである、3,5-Diethoxycarbonyl-1,4-Dihydrocollidine (DDC)誘発性 胆汁うっ滞性肝疾患モデルマウスをご紹介します。 原発性硬化性胆管炎 (PSC) PSCは胆管に生じる斑状の炎症、線維化、および狭窄を特徴とする慢性的な胆管障害で、末期まで進行すると肝臓移植が必要とされます。 現状、PSCの治療薬として知られるウルソデオキシコール酸は進行を完全に抑えるほどの効果はなく、PSCの根治療法は開発段階にあります。 DDCモデルについて DDCモデルの病態は、マウスにDDCを混餌投与することで、胆管周囲の線維化や細胆管反応を誘導します。 本モデルは、米国肝臓学会議 (AASLD)や欧州肝臓研究協会 (EASL)が示すPSCの診断基準の項目に含まれる、血液マーカーのALP値の上昇や、肝組織像における胆管周囲線維化(”onion skin” periductal fibrosis)が観察される、臨床相関性の高いPSCモデルです。 PSCや胆管炎、胆管の線維化に対する薬効評価試験をお考えの場合、本モデルを検討してみてはいかがでしょうか。 モデル情報はモデルラインナップページよりご確認ください。 詳細に資料に関しては、コンタクトフォームからお問い合わせください。
2025.01.29
胆汁うっ滞性肝疾患モデルとして広く知られている胆管結紮(BDL)誘発性肝線維症モデルをご紹介致します。 本モデルの病態は、急性肝障害、続いて肝臓の炎症および線維化へと進行していきます。 試験期間が2週間と短期間であることから、肝保護作用や抗炎症作用、抗線維化作用といった様々な治療薬の薬効を短期間で評価することが可能です。 SMCではBDLモデル以外に、STAM™モデルやCCl4、急性肝炎モデルなど様々な肝疾患関連モデル動物をご用意しております。 詳細情報はモデルラインナップにてご参照頂けます。資料のご請求やご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。
2025.01.29
本記事では肝硬変の疾患モデル動物として広く知られているCCl4誘発肝線維症モデルをご紹介致します。 CCl4誘発肝線維症モデルは、肝臓の門脈域周囲に架橋性線維化を形成するモデルです。 弊社STAM™モデル(NASH-HCCモデル)が、軽度の肝線維症を発症する一方で、本モデルは肝硬変様の強い線維症を発症します。 また陽性対照薬としてバルサルタンを設定し、薬効評価試験をご提供しております。 その試験期間は4週間と短期間であることから、線維化に対するin vivoスクリーニング試験にもご活用いただける有用なモデルであると言えます。 SMCではCCl4モデル以外に、STAM™モデルや胆管結紮(BDL)誘発性胆汁うっ滞性肝疾患モデル、急性肝炎モデルなど様々な肝疾患関連モデル動物をご用意しております。 詳細情報はモデルラインナップよりご確認ください。
2025.01.29
本記事では、腎障害の尿マーカーとしてよくお問い合わせ頂く、慢性腎臓病モデルマウスのタンパク尿をご紹介します。 臨床試験ではエンドポイントとして使用されており、非臨床研究でも注目されている重要なマーカーです。 アドリアマイシンモデルの尿中アルブミン/クレアチニン比データ 弊社のアドリアマイシンモデルを用いて経時的なタンパク尿のデータを測定した結果は上記の通りとなります。 組織学的な評価が可能なDay 28において、尿中のアルブミン/クレアチニン比が有意に増加していることが確認できます。 タンパク尿について 慢性腎臓病は腎機能の低下や構造の異常が継続する疾患であり、腎障害マーカーや組織学的な解析により評価が行われます。 その中でも臨床の現場でも一般的に利用されているのがタンパク尿であり、糸球体の損傷に伴う濾過機能の異常によりタンパク尿が認められるようになります。また、タンパク尿の測定については尿中のアルブミン/クレアチニン比の利用が、Kidney Disease Improving Global Outcomes (KDIGO)のガイドラインでも推奨されています。 実際の臨床試験で使用されている項目を評価できることは、病態マウスモデルを選択する上で非常に重要なポイントであると考えています。 現在、慢性腎臓病に対しては病態の進行抑制を目的とした治療が行われているため、この疾患に対する根本的な治療薬の開発が望まれています。 弊社では慢性腎臓病に対する病態モデルマウスを用いて新薬開発に対する薬効評価試験サービスを提供しております。 上記でご紹介したアドリアマイシンモデルを含め、下記4種類のモデルがございます。 – アドリアマイシンモデル:糸球体評価 – アデニンモデル:尿細管・間質評価 – UUOモデル:腎線維化評価 – 葉酸モデル:急性腎障害由来慢性腎疾患評価 上記モデルの特徴や使い分けなどを含め、資料請求やご質問等ございましたらお気軽にご連絡ください。
2025.01.29
本記事では、線維化に着目して医薬品開発を行い、弊社でマウスを用いた前臨床試験を実施後に、その研究結果をNature Biotechnology誌に投稿された、Insilico Medicine社様の論文をご紹介致します。 Ren et al., Nat Biotechnol., 2024 こちらの論文ではAIを用いてTRAF2- and NCK-interacting kinase (TNIK) を抗線維化のターゲットと特定し、肺、皮膚、腎臓の線維化モデル動物を用いて前臨床試験を実施し、臨床試験まで進まれた結果が記載されております。 上記の様に複数臓器に渡る線維化に対して、同一化合物がその治療効果を示していることが見られます。 これまでも線維化に関わる治療薬開発において、肝臓、肺、腎臓、腸、皮膚など複数臓器に渡って同一化合物を評価し、その中で特に有望な疾患に対する開発を進められた企業様もいらっしゃいます。 こういったご依頼を頂ける理由としては、弊社が特に炎症・線維化疾患の病態評価に注力して1,000を超える企業様と試験を実施してきたことによる実績と経験によるものと考えております。 前述のように炎症・線維化を中心とした病態評価を多数経験し、関連因子や病態の評価経験が豊富にあることから、開発されている化合物に適切な試験デザインのご提案が可能です。 ぜひコンタクトフォームからお問い合わせください。
あなたの研究を促進させます。