コラムcolumn

SMCラボラトリーズが毎⽉発信している研究コラムをご覧いただけます。

2025.01.30

肝臓疾患とサルコペニアの関係性に関するご紹介

本記事では、肝臓と骨格筋の相互関係についてご紹介させていただきます。   肝臓は他の臓器と密接に連携していることが知られており、弊社も肝臓と腸の関係性についていくつか触れてきましたが、肝臓は筋肉とも連携しております。 以前より、サルコペニアをはじめとする筋肉量の低下がNASHやNAFLDの発症や病態の悪化に関与していることが分かってきております。   通常の肝臓は食事から得られたエネルギーを蓄えますが、NASHや肝硬変などで機能が低下している肝臓ではエネルギーの貯蔵量が低下します。このエネルギーの不足を補うために、骨格筋から分岐鎖アミノ酸(BCAA)と呼ばれるタンパク質源などがエネルギー源として供給されますが、代わりに骨格筋が痩せていきます (Moriwaki et al., Biochem Biophys Res Commun. 2004)。 また、筋肉量の低下は、NAFLDの病態を悪化させるリスクと密接に関連していることも明らかになっております (Shida et al., J Gastroenterol. 2018)。 さらに、非肥満型の NAFLD 患者では、筋肉量および筋力の低下、筋萎縮、内臓脂肪の増加がリスク要因となっていることも報告されております (Shida et al., Hepatol Res. 2020) これらのことから、筋肉の量や筋肉の質、機能を補うような治療薬の開発や介入方法がNAFLD/NASHの治療や予防に必要であると思われます。   Fig. NAFLD/NASHの肝臓と筋肉の概要 NAFLD患者では、筋量が少なく、筋脂肪が多いミオステアトーシスが非常に多くみられる。サルコペニアはNAFLD/NASHのリスク上昇と密接に関連していることが示唆されている (Chakravarthy et al., Front Endocrinol (Lausanne). 2020)。   弊社はこれまで炎症と線維化の分野に特化した病態モデル動物を用いた非臨床試験をご提供して参りました。 STAM™マウスは弊社SMCラボラトリーズが開発した世界初の非アルコール性脂肪性肝炎から肝ガンを発症する病態モデルマウスであり、後期2型糖尿病の背景を有し、ヒトNASHと類似した臨床相関性の高い病態を発症します。 これまでに、STAM™マウスはNAFLDやNASHの進行に伴って腸内細菌叢が変化し、dysbiosisが起こるため肝臓と腸の相関性が明らかになっております (Guoxiang et al., Oncotarget., 2016)。 筋肉も同様に、STAM™マウスの病態の進行に相関する可能性が示唆されます。 STAM™マウスをはじめ、肝臓と筋肉の関連に着目したNAFLD/NASHの創薬研究に役立つモデルの開発や情報につきまして、アップデートがありましたらご連絡させていただきます。   詳細についてのお問い合わせや、ご質問等がございましたらお気軽にご連絡ください。

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2025.01.30

臨床相関性の高いHCCモデルマウスのご紹介

本記事では、弊社クライアント様がProc Natl Acad Sci U S A.に投稿された論文についてご紹介いたします (Dow, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2018)。   STAMTMマウスは、NASHを背景として肝ガンを自然発症する病態モデルマウスです。 本論文では、肝ガンフェーズのSTAMTMマウスの肝臓サンプルを用い、ヒト肝ガン患者の肝臓サンプルと比較したトランスクリプトーム解析を実施しております。 興味深いことに、STAMTMマウスの肝ガンは、他の肝ガンモデル(MUP, TAK1, DEN)と比較して、ヒトの分子パターンに最も近いことが報告されました。   ヒト肝ガン患者と同様にCtnnb1遺伝子に頻繁な変異があり、その下流経路であるWnt経路や細胞周期に関する経路、クロマチン修飾経路でも同様な変異が見られました。 また、STAMTMマウスの肝ガンは、ヒトにおける悪性度の高い増殖性腫瘍と類似していることが示されました。 以上のことから、STAMTMマウスがヒト肝ガン患者と比較して、遺伝子レベルで高い臨床相関性を示すことが示唆されました。   もし肝ガンに対する薬効評価試験をご検討中であれば、弊社STAMTMモデルをぜひご一考いただければ幸いです。 弊社ではお客様の化合物やご要望に合わせて、肝ガンの予防試験や治療試験など、試験デザインを提案することが可能です。 STAMTMマウスの利用にご興味ある場合は是非お問い合わせください。

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2025.01.30

肝臓疾患における腸肝軸異常の影響

本記事では肝臓疾患であるMetabolic Dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease (MASLD)と腸の関係についてご紹介を致します。   MASLDは脂肪肝→Metabolic Dysfunction-Associated Steatohepatitis (MASH)→肝線維化と病態進行を示し、最終的に肝ガンまで進行する疾患となります。 MASLDは食事や代謝異常などの様々な要因が病態進行に関わることから、現在ではmultiple-parallel hit仮説が広く受け入れられています。 病態進行の要因として酸化ストレス、脂肪毒性、ミトコンドリア機能異常などがあり、近年、注目されているのが腸肝軸(gut-liver axis)の異常になります。 腸と肝臓は門脈という血管で繋がっており、肝臓の血液供給の約70%は門脈を介しています。そのため、腸に由来する一連の細菌、細菌の代謝物や毒素が、門脈を通じて肝臓に影響を与えます。 NASH患者ではマイクロバイオームの変化や腸粘膜の透過性向上 (Leaky Gut)などが示されています(Lixin et al., Hepatology, 2012; Jay et al., CMGH, 2015)。 実際にマウスモデルを用いた解析から腸粘膜の透過性向上、細菌の異常増殖、腸内毒素症などの腸肝軸の機能障害が、炎症や線維化の進行に寄与することが示されています(Samuele et al., Hepatology, 2013; Lau et al., BioMed Res. Int.,2015)。   上記の理由から、腸の異常も兼ね備えた病態モデルを用いることで、より正確なMASHの評価が可能であると考えられます。弊社SMCラボラトリーズが開発した世界初のMASHから肝ガンを発症する病態モデルマウスSTAMTMではマイクロバイオームの変化を示すことが報告されています(Guoxiang et al., Oncotarget., 2016)。プロバイオティクスによる腸内環境の改善に伴い、MASH病態の改善が示されているため、もし腸疾患の改善に繋がる化合物をお持ちの場合は評価してみるのはいかがでしょうか。   その他、資料請求やご質問等ございましたらお気軽にご連絡ください。

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2025.01.30

NASHモデルを用いた薬効評価試験実績_ 間葉系幹細胞由来の細胞外小胞(MSC-sEV)

本記事では、弊社クライアント様 【Agency for Science, Technology and Research (A*STAR) (SGP)】がInt. J. Mol. Sci.誌に論文を投稿されましたのでご紹介させていただきます。 Title: MSC-sEV Treatment Polarizes Pro-Fibrotic M2 Macrophages without Exacerbating Liver Fibrosis in NASH (Zhang et al., Int J Mol Sci., 2023)   本論文では、間葉系間質細胞/幹細胞由来の細胞外小胞 (MSC-sEV)のNASH治療効果について、STAM™マウスを用いて評価されております。     本論文ではMSC-sEVがNASHの治療に有用であることが示唆されました。 vehicle投与群のSTAM™マウスと比較して、MSC-sEVを投与したNASHフェーズのSTAM™マウスでは、NASHの主要な臨床エンドポイントであるNAFLD activity scoreおよび肝臓の線維化面積が有意に減少したことが示されております。   STAM™マウスは弊社SMCラボラトリーズが開発した世界初のNASHから肝ガンを発症する病態モデルマウスです。ヒトNASHと類似した病態(脂肪肝→NASH→肝線維化→HCC)を発症することから、NASH診断に用いるNAFLD activity scoreによるNASH病態の評価も可能であり、これまで多くの薬効評価試験や基礎研究に活用されてきました。

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2025.01.30

腸内環境を改善して肝がんを防ぐ

本記事では、弊社の慢性肝疾患 (MASH/NASH)による肝がんモデルマウスを用いた薬効評価試験の実証例をご紹介いたします。 弊社の肝がんモデルマウスを使った薬効評価試験にて、肝臓だけではなく腸も重要な肝がん治療における標的臓器であることがわかりました。   Title: Gut insulin action protects from hepatocarcinogenesis in diabetic mice comorbid with nonalcoholic steatohepatitis (Soeda K et al., Nat Commun. 2023) PMID: 37852976   これまでの肝がん治療法は肝臓に焦点を当てきましたが、今回の発表により、腸のdysbiosisに焦点を当てて肝がんを治すという新しい肝がんの治療法が初めて報告されました。   肝がんモデルマウスにInsulinを投与すると、血中インスリン濃度が改善するだけではなく、MASH/NASHに伴う腸内細菌叢の変化やリーキーガットが改善し、肝がんの腫瘍数やサイズが有意に減少しました。   本研究で実施された解析項目に加え、本モデルマウスでは生存率やCTによりin-lifeでの腫瘍数・サイズの解析、癌マーカーのグルタミンシンターゼの発現等の病理組織的解析を実施することが可能です。   したがって、Dysbiosisや腸疾患に着目している方は、当社肝がんモデルマウスを使うことでother indicationとして慢性肝疾患に起因する肝がんに対する薬効を評価することが可能であることが示されました。   これまでの肝がんの主な原因はウイルス性肝炎ですが、ワクチン接種によるウイルス性肝炎の予防を通じて肝がんの発症を抑えられる可能性が示されており (Chang, et al. Gastroenterology. 2016)、ウイルス性肝炎由来の肝がんは克服できることが予想されます。 一方で、MASH/NASHは肝臓において酸化ストレスの亢進や免疫システムや代謝システムの異常を引き起こすことで肝がんのリスクファクターと考えられており、現段階ではMASH/NASHの予防方法や治療方法はありません。したがって、MASH/NASH患者の増加に伴ってMASH/NASHに起因する肝がんの患者も増加し続けることが予想されています (Estes, et al. Hepatology. 2018; Llovet et al., Nat Rev Dis…

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2025.01.30

腸内細菌叢に着目したNASH治療薬の研究開発

本記事では 腸内細菌叢 (microbiome)に着目した代謝異常関連脂肪肝炎 (MASH)の治療法と、STAM™マウスを用いた研究例についてご紹介いたします。 近年、腸内環境を変化させることにより、疾患の治療や予防に結びつける試みが世界で活発に行われています。代謝異常関連脂肪肝炎 (MASH)においても、腸管透過性の亢進やDysbiosis、胆汁酸の代謝異常等を介して、MASH病態と腸内細菌叢との関連性が示唆されており、腸内細菌叢が治療ターゲットとして注目を集めています[1-3]。   MicrobiomeとMASHに関するSTAM™マウスを用いたin vivo研究 Guoxiangらは、STAM™マウスでは、腸内のBacteroidesやClostridiumの増加をはじめとした腸内細菌叢の変化が起き、それらは血中や肝臓のLPS濃度の上昇やNAFLD Activity Scoreの上昇と相関することを報告しています[4]。また、これらの腸内細菌叢の変化はヒトNASHでも観察されております[5, 6]。 さらに、Tsumura & Co. (JPN)は、STAM™マウスを用いたMASH薬効評価試験において、漢方薬の大柴胡湯がNAFLD activity scoreや腸内細菌の多様性を改善することを明らかにし、腸内細菌叢にアプローチしたNASHの治療戦略の有効性を示唆しております[7]。   以上のことから、STAM™マウスが腸内細菌叢に着目したMASH治療薬の研究開発に適したプラットフォームであると言えます。   腸内細菌叢やMASH/MAFLD関連の治療薬開発や研究のプロジェクトをお持ちの方は、STAM™マウスを用いたin vivo試験を検討してみてはいかがでしょうか。 ご関心やご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。   引用文献 1. Zhu L et al., Hepatology. 2013 2. Luther J, et al. Cell Mol Gastroenterol Hepatol. 2015 3. Tsay CJ, et al. Clin Liver Dis (Hoboken). 2022 4….

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2025.01.30

NASHモデルマウスを用いた薬効評価試験実績

本記事では、弊社クライアント様がCellsに投稿された論文についてご紹介致します。   こちらの論文では選択的PPARα modulatorでありpemafibrateとNa+/グルコース共役輸送担体2の阻害剤であるtofogliflozinの単独、併用療法によりNASHモデルマウスの病態進行に対する影響の評価を実施されています。Pemafibrateとtofogliflozinという異なるメカニズムに対する化合物を用いることで相乗的な効果を示すことが示されました。     NASHについては、単なる非アルコール性脂肪肝炎ではなく、様々な代謝異常が認められる脂肪性肝疾患であると考えられるようになっています。このことからも、疾患を一つの治療薬ではなく、複数のターゲットに対する治療薬を併用して改善するという考え方は非常に合理的であると考えられます。 また、こちらの論文では近年注目されているNASH由来肝ガンの進行抑制に対する評価も実施されています。   今回の論文では弊社のSTAMTMモデルを用いて解析を実施頂きました。STAMTMモデルは、弊社SMCラボラトリーズが開発した世界初のNASHから肝ガンを発症する病態モデルマウスです。ヒトNASHと類似した病態(脂肪肝→NASH→肝線維化→HCC)を発症することから、これまで多くの薬効評価試験や基礎研究に活用されており、様々な化合物の併用療法にもご利用頂いてきました。 STAMTMモデルを用いて、お持ちの化合物の効果を単独、併用療法で試してみませんか?これまでの経験を用いて試験をご提案することも可能です。

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2025.01.30

NASHモデルマウスを用いた薬効評価試験例

本記事では、PLOS ONEにて弊社クライアント様による論文発表がございましたのでご紹介致します。   本研究では、NASHモデルを用いて、SGLT2阻害剤であるipragliflozinの抗NASH効果を報告しております。線維化をはじめとして、脂肪肝、炎症、バルーニングの全ての項目で改善が認められています。    Ipragliflozinの抗NASH効果は、グルコースの尿中排泄を介した高血糖の改善だけでなく、miRNAであるmiR-19b-3pの制御に起因していることが示唆されました。miRNAの解析については、以前にも他のクライアント様が弊社STAMTMモデルを用いて、病態進行に伴うmiRNAの変化による影響について報告頂いています。   STAMTMモデルは、弊社SMCラボラトリーズが開発した世界初のNASHから肝ガンを発症する病態モデルマウスです。ヒトNASHと類似した病態(脂肪肝→NASH→肝線維化→HCC)を発症することから、これまで多くの薬効評価試験や基礎研究に活用されており、様々な基礎データが豊富にございます。 お持ちの化合物のターゲットの発現を事前に調査し、STAMTMモデルを用いた薬効評価試験を実施しませんか?   STAMTMモデルの利用にご興味ある場合は是非お問い合わせください。

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2025.01.30

NASHモデルを用いた薬効評価試験実績_TGFβ

本記事では、弊社クライアント様がnpj Precision Oncologyに投稿された論文についてご紹介いたします。 Title: “Transcriptomic analysis of hepatocellular carcinoma reveals molecular features of disease progression and tumor immune biology”     STAM™マウスは、NASHを背景肝として肝ガンを自然発症する病態モデルマウスです。 本論文では、STAM™マウスを用いて、TGF-β中和抗体の投与が線維化に伴う肝ガンを抑制する可能性を報告しています。肝ガンフェーズにあるSTAM™マウスへTGF-β中和抗体を投与することで、線維化面積や肝臓中の腫瘍数・直径の減少が確認されております。またCD8+T cellの腫瘍への浸潤の増加も確認されました。   肝ガンは、線維化の進行過程でガン関連遺伝子が影響を受けて発症すると考えられております。したがって、線維化に関与する因子を抑制することがHCCの治療や予防に役立つことが期待されます。   弊社では、こちらの論文のように肝硬変と肝ガンを罹患したヒトで観られた線維化因子の変化に基づき、抗線維化に関する候補物質の薬効試験をSTAM™マウスで実施することで、臨床相関性のある前臨床試験を行うことが可能です。   またSTAM™の他、弊社では肺や皮膚、腎臓等、種々の臓器における炎症/線維化疾患のモデルマウスを取り揃え、薬効評価試験サービスをご提供しております。研究員同席の下、Webミーティングも可能でございますので、ご関心がありましたらお問い合わせください。

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2025.01.30

MASHモデルマウスにおける脂肪組織の関与について

本記事では、弊社STAMTMモデルにおけるMASH病態とアディポサイトカインの関連性について、ご紹介致します。   MASLDから肝細胞障害・壊死を伴うMASHへの進展発症には、多臓器が関与するmultiple parallel hit 説が有力とされております[Tilg et al, 2021]。MASH病態に密接に関与している臓器として、脂肪組織が挙げられます。 脂肪組織は余剰エネルギーを蓄えておく器官としてだけでなく、TNF-aやIL-6、アディポネクチン等の種々のアディポサイトカイン分泌器官としても機能し、他臓器の代謝や炎症に影響を及ぼすことが知られています。   特にアディポネクチンは、インスリン感受性の増強や糖、脂質代謝改善、抗炎症作用を有していることが知られております。NASH患者では、健常者と比較して血中アディポネクチンが低値を示しており、血中濃度が低い患者程より強い炎症を示すことが報告されていることからNASH病態の発症進展に大きく関与していると考えられています[Musso et al, 2005; Finelli et al, 2013]。   STAMTMモデルにおいても、同様に血中アディポネクチン濃度の低下が認められております。 今回の結果により、本モデルが肝臓のみならずMASH病態の発症進行に寄与しているとされる脂肪組織においても、同様に臨床相関性を有している可能性が示唆されました。 弊社では、STAMTMモデルを始め、炎症/線維化に関連した様々な病態モデルマウスを取り揃え、薬効評価試験サービスを提供しております。 その他、資料請求やご質問等ございましたらお気軽にご連絡ください。

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