肝臓疾患における腸肝軸異常の影響
本記事では肝臓疾患であるMetabolic Dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease (MASLD)と腸の関係についてご紹介を致します。
MASLDは脂肪肝→Metabolic Dysfunction-Associated Steatohepatitis (MASH)→肝線維化と病態進行を示し、最終的に肝ガンまで進行する疾患となります。
MASLDは食事や代謝異常などの様々な要因が病態進行に関わることから、現在ではmultiple-parallel hit仮説が広く受け入れられています。
病態進行の要因として酸化ストレス、脂肪毒性、ミトコンドリア機能異常などがあり、近年、注目されているのが腸肝軸(gut-liver axis)の異常になります。
腸と肝臓は門脈という血管で繋がっており、肝臓の血液供給の約70%は門脈を介しています。そのため、腸に由来する一連の細菌、細菌の代謝物や毒素が、門脈を通じて肝臓に影響を与えます。
NASH患者ではマイクロバイオームの変化や腸粘膜の透過性向上 (Leaky Gut)などが示されています(Lixin et al., Hepatology, 2012; Jay et al., CMGH, 2015)。
実際にマウスモデルを用いた解析から腸粘膜の透過性向上、細菌の異常増殖、腸内毒素症などの腸肝軸の機能障害が、炎症や線維化の進行に寄与することが示されています(Samuele et al., Hepatology, 2013; Lau et al., BioMed Res. Int.,2015)。
上記の理由から、腸の異常も兼ね備えた病態モデルを用いることで、より正確なMASHの評価が可能であると考えられます。弊社SMCラボラトリーズが開発した世界初のMASHから肝ガンを発症する病態モデルマウスSTAMTMではマイクロバイオームの変化を示すことが報告されています(Guoxiang et al., Oncotarget., 2016)。プロバイオティクスによる腸内環境の改善に伴い、MASH病態の改善が示されているため、もし腸疾患の改善に繋がる化合物をお持ちの場合は評価してみるのはいかがでしょうか。
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