SMCラボラトリーズからのお知らせや新着情報を発信します。
本日は肝臓疾患であるNonalcoholic steatohepatitis (NASH)と腸の関係についてご紹介を致します。 NASHの要因として酸化ストレス、脂肪毒性、ミトコンドリア機能異常などがあり、近年、注目されているのが腸肝軸(gut-liver axis)の異常になります。 腸と肝臓は門脈という血管で繋がっており、肝臓の血液供給の約70%は門脈を介しています。そのため、腸に由来する一連の細菌、細菌の代謝物や毒素が、門脈を通じて肝臓に影響を与えます。 NASH患者ではマイクロバイオームの変化や腸粘膜の透過性向上 (Leaky Gut)などが示されています(Lixin et al., Hepatology, 2012; Jay et al., CMGH, 2015)。 実際にマウスモデルを用いた解析から腸粘膜の透過性向上、細菌の異常増殖、腸内毒素症などの腸肝軸の機能障害が、炎症や線維化の進行に寄与することが示されています (Samuele et al., Hepatology, 2013; Lau et al., BioMed Res. Int.,2015)。 上記の理由から、腸の異常も兼ね備えた病態モデルを用いることで、より正確なNASHの評価が可能であると考えられます。 当社SMCラボラトリーズが開発した世界初のNASHから肝ガンを発症する病態モデルマウス STAM™マウス ではマイクロバイオームの変化を示すことが報告されています (Guoxiang et al., Oncotarget., 2016)。 また、STAM™マウスにおいて、化合物が腸内細菌叢を変化させることがNAFLDやNASHを改善することも報告されております (Pinheiro et al., Biomedicines. 2022; Ishizawa et al., Gene. 2022)。 プロバイオティクスによる腸内環境の改善に伴い、NASH病態の改善が示されているため、もし腸疾患の改善に繋がる化合物をお持ちの場合は評価してみるのはいかがでしょうか。 その他、資料請求やご質問等ございましたらお気軽にお問い合わせください。
本日9月21日は“世界アルツハイマーデー”です。 先日、世界アルツハイマーデーを含めた世界アルツハイマー月間について触れましたが (ニュース記事はこちら)、本日はアルツハイマー病の治療薬の開発についてSMCの考えを発信したいと思います。 現在のアルツハイマー病治療薬はFDAの承認薬としては5種類(ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、メマンチン、アデュカヌマブ)があります。 これらの治療薬は、神経細胞の働きを補うものと、アルツハイマー病の原因と考えられているアミロイドβを脳内から取り除くものに分けられます。現状として、この5種類の治療薬ではアルツハイマー病の根治には至らず、発症を遅らせるような効果しか得られておりません。 アルツハイマー病の原因は脳内でアミロイドβが過剰に蓄積することであると考えられているものの、脳内で色々な現象が起こる複合的な病気であるため、単一の原因や現象にフォーカスした治療薬のみではなく、複合的な作用を発揮する治療薬やいくつかの治療薬の組み合わせが治療の鍵になるかもしれません。 アルツハイマー病は、アミロイドβの過剰な産生と蓄積により脳内の恒常性が破綻することから、免疫細胞が活性化し脳内で慢性炎症が起こることが考えられます 【Reference】。この脳内炎症は、アルツハイマー病発症前から発症まで病態に関与しています。さらに、アミロイドβの産生に脳内炎症が関与することも報告されていることから 【Reference】、脳内炎症もアルツハイマー病の原因の一つであるかもしれません。 したがって、アルツハイマー病の治療には、①アミロイドβの排除や阻害、②神経の活性化と保護 に加えて、③脳内の炎症を抑制し適切に制御することが重要なのではないかと考えます。 SMCではアミロイドβに依存しない脳内炎症を呈するアルツハイマー病モデルマウスとして、icv-STZモデルマウスを用いた薬効評価試験を提案することができます。 当社のサービスやicv-STZモデルにご興味・ご関心がございましたら、お気軽にお問い合わせください。 ■「国際アルツハイマー病協会」(Alzheimer's Disease International; ADI) URL: https://www.alzint.org/ ■Reference Kinney et al., Alzheimers Dement (NY). 2018. ■icv-STZモデルについてはこちら
今回は、NASH治療薬の開発に欠かせない評価項目NAFLD activity score (NAS)とSTAM™マウスについて 紹介いたします。 NASH治療薬の開発における重要事項はアメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration; FDA)によるガイドラインに示されています。NASH治療薬開発の目的から有効性の評価については以下のように述べられております。 NASH 治療の究極の目標は、疾患の進行を遅らせる、止める、または逆転させることであり、臨床転帰を改善することである。 NASH の進行は遅く、肝硬変への移行や生存率などの臨床的エンドポイントを評価する試験の実施に時間がかかるため、FDA はNASで評価し、肝組織学的改善をエンドポイントとして検討することを推奨する。 病理組織学的な総合判定で脂肪肝炎が消失し、NASで肝線維化の悪化がないこと。脂肪肝炎の消失は、脂肪肝疾患がないこと、あるいは脂肪肝炎を伴わない孤立性または単純性脂肪症と定義し、NASスコアは炎症が0~1、バルーニングが0、脂肪症が任意の値であることを条件とする。 これらはガイドラインの一部ですが、上記3にもあるとおり、NASはNASH治療薬の有効性を示す重要なクライテリアであり、必要評価項目です。その内容は、肝臓生検の組織学的解析において、炎症(免疫細胞の集積)、バルーニング、脂肪摘の3つの病変の程度を数値化し、スコアリングするものです。 当社のSTAM™マウスは、NASにおける3つの病変が観察される画期的なNASHモデルです。すなわち、NASH患者の病態を反映した、臨床相関性の高いNASHモデルであると考えております。 STAM™マウスを使った薬効評価試験にて、NASH治療薬の開発を進めてみませんか? 現在臨床試験の段階にあるNASHの候補治療薬について、当社クライアント様がSTAM™を用いて化合物の薬効評価試験を行った論文も投稿されておりますので、ご興味のある方は是非、ご覧ください。 また、STAM™マウスのNASのデータや、組織像などの基本的なデータについて、詳細について興味のある方はお気軽にお問い合わせください。 ■FDAガイドライン Noncirrhotic Nonalcoholic Steatohepatitis With Liver Fibrosis: Developing Drugs for Treatment Guidance for Industry ■STAM™マウスについて ■STAM™マウスを用いた薬効評価試験の文献例 Farnesoid X Receptor Agonist:…
9月は 「世界アルツハイマー月間」 です。アルツハイマー病について関心を深めてみませんか? 1994年、「国際アルツハイマー病協会」(ADI)は、世界保健機関(WHO)と共同で毎年9月21日を「世界アルツハイマーデー」と制定し、この日を中心に認知症の啓蒙を実施しています。また、9月を「世界アルツハイマー月間」と定め、様々な取り組みを行っています。 アルツハイマー病とは認知症の1種で、進行性の神経疾患です。アルツハイマー病には遺伝が関係しない孤発性と遺伝が関係する家族性の2つのタイプがありますが、90%以上の患者さんが孤発性アルツハイマー病です。アルツハイマー病の治療薬は4種類が承認されていますが、いずれも進行を遅らせるものであり、現段階では根治するための治療薬がなく、開発が急務です。 SMCではアルツハイマー病を主とする神経疾患の医薬品開発のための非臨床試験として、icv-STZモデルマウスを用いた薬効評価試験を提案することができます。 アルツハイマー病になると脳内では神経細胞がダメージを受け、修復のため炎症が起こります。しかしながら、疾患の進行に伴い炎症も続くため、慢性炎症状態となります。この慢性化した脳内炎症はアルツハイマー病の病態に悪影響であることが多く報告されています。したがって、アルツハイマー病の治療には脳内炎症を抑えることや、制御することが重要であると言えます。 icv-STZモデルは、マウスの脳内にストレプトゾトシンを投与することで、酸化ストレスに由来する神経へのダメージおよび免疫細胞の活性化が惹起される孤発性アルツハイマー病モデルマウスです。脳内炎症にフォーカスした薬効評価試験を提供することができます。 当社のサービスやicv-STZモデルにご興味・ご関心がございましたら、お気軽にお問い合わせください。 ■「国際アルツハイマー病協会」(Alzheimer's Disease International; ADI) URL: https://www.alzint.org/ ■icv-STZモデルについてはこちら
7月28日は “世界肝炎デー”です。 肝炎について関心を深めてみませんか? 世界保健機関(WHO)は、2010年に世界的レベルでのウイルス性肝炎のまん延防止と患者・感染者に対する差別・偏見の解消や感染予防の推進を図ることを目的として、7月28日を”World Hepatitis Day”(世界肝炎デー)と定め、肝炎に関する啓発活動等の実施を提唱しました。 この世界肝炎デーではウイルス性肝炎について言及しております。肝炎による死亡の 95 % 以上はB型、C型、D型肝炎ウイルスによるものとされており、ウイルス性肝炎の予防や治療はもちろん、検診により肝臓の状態について知ることが非常に重要です。 今回はウイルス性肝炎についての内容ですが、同時にウイルス性肝炎以外の肝炎も解決しなければなりません。 当社では非ウイルス性の非アルコール性脂肪肝炎(NASH)やその重症化による肝ガンを解決すべく、当社オリジナルのSTAM™マウスを使った薬効評価試験を軸にサービスを展開しております。 画期的なNASHの予防方法や治療方法は今のところ存在せず、今後はウイルス性肝炎よりもNASH患者が増えていくことが考えられます。当社はNASHの治療や予防方法の確立のための研究開発をサポートしております。 世界肝炎デーについて ■World Health Organization https://www.who.int/campaigns/world-hepatitis-day/2022 ■日本WHO協会 https://japan-who.or.jp/news-releases/2207-11/ 国内の肝炎対策について ■厚生労働省 肝炎総合対策の推進 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kanen/index.html STAM™マウスについてはこちら。
当社慢性腎臓病モデルを用いて発表された論文について紹介します。 上記の論文では当社の片側尿管閉塞(UUO)モデルを用いた結果を報告しています。 化合物の投与後に組織学的解析、遺伝子発現解析を実施し病態改善を示すと共にメカニズムの解析を実施しています。 UUOモデルについて こちらの論文で使用しているUUOモデルは間質性線維症、尿細管萎縮、炎症細胞浸潤などの病理的特徴を再現性良く示すモデルとなっています。 また、試験期間が2週間と短いことから腎臓の線維化に対する化合物のスクリーニング試験に適したモデルとなっております。 抗線維化効果を示す化合物をお持ちの場合、UUOモデルを用いた試験を検討されてはいかがでしょうか? UUOモデルの作成方法や確認できる病態に興味がある方はこちら。
疾患や病態の理解に伴う新しい概念である「代謝異常関連脂肪性肝疾患」について紹介します。 この疾患概念については、2020年のJournal of Hepatology誌にて合意声明が掲載されています。 上記論文の詳細をご覧になる場合はこちらをご確認ください。 非アルコール性脂肪性肝疾患から代謝異常関連脂肪性肝疾患へ 以前もご紹介させて頂いたように、生活習慣変化に伴い、糖尿病や肥満を示す人口が多くなり、既存の患者数と共に潜在患者の多さから非アルコール性脂肪性肝疾患が注目をされています。 非アルコール性脂肪性肝疾患という疾患の理解が進むにつれ、当時の診断基準の定義だけでは患者の実態に合わない例が認められるようになってきました。その現状に対し代謝異常関連脂肪性肝疾患という概念が示され、今後も非アルコール性脂肪性肝疾患自体は存在し続けるものの、疾患を一括りにするのではなく、原因や病態を細分化して薬の開発を行っていく必要性が加速していくと考えられます。 当社では既に代謝異常関連脂肪性肝疾患を想定したモデル開発を開始しており、アップデートがありましたらご連絡させて頂きます。 当社はこれまで炎症と線維化の分野に特化した病態モデル動物を用いた非臨床試験をご提供して参りました。 当社のSTAMTMマウスは弊社SMCラボラトリーズが開発した世界初の非アルコール性脂肪性肝炎から肝ガンを発症する病態モデルマウスであり、後期2型糖尿病の背景を有し、ヒトNASHと類似した病態を発症します。STAMTMマウスの詳細はこちらからご確認ください。
NASH領域において、これまで既存薬や新規開発品を用いた数多くの臨床試験が実施されてきましたが、未だNASH治療薬は上市されておりません。 この一因として、NASHが複雑な病態進行を辿ることが考えられ、ヒトの病態を完全再現できる動物モデルが確立されていないことが挙げられます。しかし、現状ではその複雑さに対応できる動物モデルの樹立は難しく、目的に応じて複数の動物モデルを使用し、病態への効果を多角的に評価することが必要になります。 STAM™モデルは、弊社SMCラボラトリーズが開発した世界初のNASHから肝ガンを発症する病態モデルマウスです。ヒトNASHと類似した病態(脂肪肝→NASH→肝線維化→HCC)を発症しますが、肝硬変は発症しないという特徴を有します。そこで本モデルに加え、肝硬変モデルであるCCl4誘発肝線維症モデル(CCl4モデル)を導入・補完することで、非臨床段階におけるNASH治療薬開発のトータルサポートが可能であると考えております。 図1:STAM™モデルおよびCCl4モデルの比較表 ご質問等ございましたらお気軽にご連絡ください。
当プログラムは、当社の企業理念である「既存薬では治療できない疾患に対する新薬とその新市場を創出し、患者QOLに貢献する」という企業テーマから医薬品マーケットにおける「新薬のより一層の研究開発促進」を目指して、当社が開発したNASH-HCC病態モデルマウス(以下「STAM™」)のさらなる利用促進を目指し、既存の価値にとらわれず、同分野における研究のテーマや手法に挑む多くの企業やアカデミア団体でのプロジェクトを支援していきたいとの観点からCSR活動の一環として公募研究を実施するものです。 今後2022年度に向けて新しい助成テーマの検討を進めることとし、「令和4年度 SMCラボラトリーズ株式会社 研究助成プログラム」を公募いたします。 応募について 1. 応募資格日本国内の公的研究機関、医療機関及び企業などに所属する45歳以下の研究者で、研究成果を論文学会等で積極的に発表できる方を対象とします。 *審査は公正に行い、審査内容は非公開とさせていただきます。 *現在当社と取引させていただいております研究者の方は対象外とさせて頂きます。 2. 公募する研究内容当社STAM™マウスを用いた試験の助成 試験開始時期は、2022年6月以降を予定しています。 3.募集期間 令和4年3月1日(火)~ 3月31日(木)17時必着 応募方法については、当社までお問合せください。
当社顧客であるMarvel Biosciences社からSTAM™マウスモデルを用いた薬効評価試験の結果が公表されました。 詳細は、Marvel Biosciences社のプレスリリースをご覧ください。 Marvel Biosciences Lead Asset MB-204 Show 47% Reduction in Liver Fibrosis and Active Indications in Multiple Pre-Clinical Models of Nash | MARVEL Biotechnology
COVID-19は肺炎だけでなく、肝臓や腎臓、腸などへの障害を引き起こす多臓器疾患として認識されつつあります。また、最近では後遺症として肺の線維化についても着目され始めています。 COVID-19はsevere acute respiratory syndrome (SARS)と同じくbeta-coronavirus classのウイルス感染に伴って発症します。 SARS流行時、感染の数週間後には肺部の線維化が報告されています。また、その後の追跡調査においても、1年経過後のSARS生存者の20%以上に肺線維症が観察されたことから、肺線維化が長期的な問題であることが分かります[David S. Hui et al., Chest., 2005; Lixin Xie et al., Respir Res., 2005]。 COVID-19患者においてもCT画像を用いた解析において線維化の症状が観察されたことが報告されており、感染に伴う急性炎症だけでなく、その後の長期間に渡って影響が及ぶことが予想されます[Zheng Ye., European Radiology, 2020]。 当社では肺の線維症モデルとしてIdiopathic pulmonary fibrosis (IPF)モデルを保有しており、多くの試験経験がございます。 ウイルス感染による肺の損傷によりIPFを発症することも報告されているため、COVID-19の流行が落ち着いた後に開発の必要性が高まることが予想されます。 COVID-19の感染予後である肺線維化の予防・治療について関心がある方がいらっしゃいましたら、今後のニーズを踏まえてIPFモデルをご活用するのはいかがでしょうか。 また肺線維化だけでなく、COVID-19発症後に認められるARDSに対しては、当社ではLPSモデルを提供しています。 弊社ではIPFモデルを始め、炎症/線維化に関連した様々な病態モデルを取り揃え、薬効評価試験サービスを提供しております。